第4章 赤鼻のサンタクロース
お帰りなさい!ってパタパタと玄関まで迎えに来て。
お風呂にする?先にご飯食べる?
···それとも?
恥ずかしがりながら、それとも···の続きを言わない春華が脳裏に浮かんで···
待て待て!
なんでイメージが新婚さんなんだよ!!
なに、考えてんだよオレ!
浮かび上がる妄想を追い払うように頭をブンブンと振ってみる。
『やっくん、なんか顔が赤いけど大丈夫?もしかして風邪とか?』
麺をすくい上げながら、春華がオレの顔をひょこっと覗いて来た。
「あ、いや何でもないよ。店内が暖かいから、かな?なんて、アハハ···」
『そう?厨房はわりと寒いから、ホールに出るまでは暖かさはあんまりわかんないけど···でも、風邪じゃないなら良かった。はい、やっくんの出来た』
厨房、寒いのか?
こっち側はこんなに暖かい感じがするのに。
ペーパータオルで手を拭く春華を、何気なく見つめる。
きっと、手荒れとか気にしてるんだろうな。
こないだ一緒に帰った時も、ハンドクリーム塗ってたっけ。
しかも、何度も。
「あのさ、春華」
黒「お~い、オレら会計終わってんだけど~?」
このタイミング···クロのヤツ、絶対わざとだ。
『やっくん?』
「···会計してくる」
トレーを持ち上げ、そのままレジへと向かう。
ー いらっしゃいませぇ ー
くそっ···コイツが付きまとうチャラ男か?!
いや待てよ?
それとも、アッチのヤツか?!
レジや厨房にいる人に軽く不機嫌な表情を向け会計をしていると、その姿さえクロはニヤニヤしながら見てくる。
「クロ、何度も言うけどな···」
黒「春華、お前もう少しでバイト終わるんだろ?」
『え?あ、はい···あと30分くらいかな?』
クロが声を掛けると、リエーフの頼んだおいなりさんを作りながら時計を振り返り春華が答えた。
黒「んじゃ、待ってっから一緒に帰んぞ」
そうそう、一緒に···えっ?!
なんでクロが?!
『えっ?!』
そうだろ、春華だってそう思うよな?
そんなオレの考えを読んでかどうか、またもクロはニヤリとオレに憎たらしい笑いを向ける。
黒「一緒に帰んぞ、送ってくから」
『あ、はい。じゃあゆっくり食べてて下さい?』