第4章 赤鼻のサンタクロース
「じゃあな!お先!!」
言い逃げするかのように言って、バタバタと部室を出た。
あとからクロ達が来るのは分かってる。
けど、みんなで一緒に···より、オレは誰より一番に春華の所へ着きたいから。
柄にもなくダッシュして、春華のバイト先へと急ぐ。
時々捕まる信号で足を止める度に振り向き、他のメンバーが追いついてないかと気にしてしまい、そんな自分に軽く笑ってしまいながらも、信号がGOを示すとまた走り出す。
着いた!
肩で息をしながら、両膝に手を付いて呼吸を整える。
部活の走り込み以上に走った様な気がして笑いが込み上げた。
オレ、どんだけ必死なんだし。
「あっちィ···」
マフラーを外し、ジャージの上に重ね着してる部の揃いのウォーマーのファスナーを開ける。
雪はまだチラチラと降っていて、全力ダッシュしたオレの体から程よく火照りを連れ去ってくれる。
肺いっぱいに空気を取り込み吐き出せば、降り続く雪に負けないくらいの白さを放つ。
雪から逃れる様に店の屋根下に移動しながら、チラリと店内を覗くと···
いた。
時間帯のせいもあるのか、客は割りと入ってて接客をする春華がちょこまかと動きながら客を捌いている。
そしてその近くには···なんかこう、チャラ男っぽい感じの大学生らしき男と、ちょっと若そうな店長っぽい男。
春華以外は危なそうなヤツしかいねぇ?!
ヤバいだろ、絶対!!
危険地帯だぞ、ここ!!
っていうか···何でこんなに焦るかなぁ。
春華はちゃんと、彼氏いるって言ってくれてんのに。
違う、そうじゃないな。
だからこそ心配だし、気になるんだよ。
彼氏いるって言ってるにも関わらず、言い寄られるってのはオレとしてはスゲー困るし。
彼氏···
何度もそのフレーズを繰り返し、ひとり勝手に照れる。
ヤバい、顔が緩む。
誰かに見られたら···と思って、何気ない素振りをしながら顔を片手で覆う。
黒「へぇ~、やっくんもそういう顔をするってのは、知らなかったなぁ?」
突如降り掛かる声に驚き、ザッと振り返れば。
リ「夜久さ~ん!オレにも幸せ分けて下さいって!」
分けるか!
研「やっくん、春華の事ストーカーしてるの?」
違うっつーの!!
「い···いつからいた?」