第3章 セカンドガール
「おい、春華、お前そんなとこで何やってんだよ?」
不意に名前を呼ばれ顔を上げれば、寒さのせいか、普段以上に目付きの悪い賢太郎と、その後方に矢巾くんと渡くん。あと、名前は分からないけど、バレー部の1年生。
「賢太郎こそ…。」
「部活の帰り。」
賢太郎、ちゃんと部活行ってんだ。
「今から野郎だけでボーリング行くんだけど、池田さんも良かったら一緒に行く?」
爽やかな笑みを浮かべ声を掛けてくれる矢巾くん。いつもだったら行くって返事をする所だけど、さっきの光景が目に焼き付いて頭を離れない。ずんと重たくなってく気持ちに心が押し潰されそうになる。
「やっぱ俺帰るわ。行くぞ。」
強引に私の手から荷物を奪い取った賢太郎はすたすたと歩いて行った。
「ちょっと、賢太郎!?」
矢巾くん達にごめんねと頭を下げ、慌てて賢太郎の後を追った。そして、そのまま賢太郎の家に上がり、冒頭に至る。
賢太郎相手にこんな話するつもり無かったのに、賢太郎に何があったんだよ、なんて聞かれたら、涙が止まらなくなって、泣きながらさっきあった出来事を賢太郎に打ち明けた。優しく慰めてくれるだとか、親身になって話を聞いてくれる訳でも無い賢太郎。けど、賢太郎はいつも私の変化に気付いてくれる。だから、欲しい言葉を掛けてくれないと分かっていても、つい、いつも賢太郎に打ち明けてしまう。