第3章 セカンドガール
「悪い、毎年イヴは家族で過ごすって決まってんだ。けど、クリスマスは一緒に過ごそうな。」
そう言って頭を撫でてくれた先輩に笑顔で、クリスマス楽しみにしてます。なんて返事をした自分を殴ってやりたい。
そりゃあ、男子高校生が18にもなって、家族と過ごすなんて、珍しいなとは思ったよ。けど、家族を大事にしてる先輩って素敵だなって思った。完全にこれは恋をしてる時特有の現象だ。
「いい加減泣き止め…うぜえ。」
「何よ…その言い方。可愛い幼馴染が泣いてんのに…他に言い方あるでしょう?」
クリスマスイヴ、先輩に渡すプレゼントを買いに出掛けた。先輩に似合いそうなマフラーを見つけ、それを手に取った。マフラーを手に喜ぶ先輩の顔を思い浮かべ、綺麗に包装されたプレゼントを大事に抱え歩いている時、偶然見掛けた先輩の姿。隣には先輩と仲睦まじく腕を組み歩く知らない女の人。クリスマスイヴに家族と過ごすくらい仲がいいのだから、もしかしたら先輩のお姉さんなのかもしれない。きっとそう。そう言い聞かせたけど、嫌な予感は止まらなくて、私の足は自然と先輩の方へと向かった。先輩の名前を呼び、先輩を呼び止めた時、少しだけバツの悪そうな顔をした。先輩と腕を組む綺麗なお姉さん(仮)は後輩?と尋ねると、先輩はそれに頷いた。それに少し胸が傷んだけど、お姉さんに彼女だって紹介するのが恥ずかしいだけなのかもしれない。そう思い直したが、品定めするようなお姉さん(仮)の視線が凄く痛くて、いたたまれない気持ちになった。
「いくら先輩見掛けたからって、デート中に声掛けるなんて空気読めな過ぎでしょ。」
その言葉にああ、やっぱりと肩を落とした。
自分が先輩の本命じゃない事は薄々感ずいていた。けど、気付かないフリをしてれば、先輩は私の隣で笑ってくれていたから、見たくない現実から目を逸らし、束の間の幸せにしがみついていた。けど、束の間の幸せなんてこんなにも脆く、簡単に壊れてしまうんただ。
先輩と彼女さんが肩を並べ歩く後ろ姿を見送った。鉛のように重たくなった足は動かず、ただその場に立ち尽くし、二人が歩いて行った道を見つめた。