第2章 好きから始まる2人
とりあえず行く宛もなく隣を歩いて。
チラリと横顔を盗み見てしまう。
背、高いな。どれくらいなんだろう。
私服、カッコいいな。
お店の姿もかっこよかったけど。
……隣、あったかいな。
少しだけ恥ずかしくて、緩んだ口元を隠すように
マフラーに少しだけ顔を埋める。
身体がふわふわして、そわそわして。
この感覚、久しぶりだ。
「なーにみてんの、お客様」
盗み見ていたつもりの視線がぶつかって
からかうような素振りでニヤリと笑う。
「すいません、つい」
低い、テノール。
好き、が零れそうになる。
「黒尾 鉄郎」
「え?」
「黒尾鉄朗。店員さん、じゃおかしいだろ?」
こくりと頷いたのをみて、また小さく笑う。
「黒尾、鉄朗さん…」
黒「おう」
「池田 春華です」
黒「春華ちゃん、な。よろしく」
差し出された右手に手を重ねて。
そのまま私たちは初めて手を繋いだ。