第2章 会場の下見。
**「あっ・・・えっと、あの・・・」
言葉にならない言葉を発しながら少しずつ坂本と距離を取る。
早く着かないかな、エレベーターの中にいるのなんて数十秒のはずなのに妙に長く感じる。
その時エレベーターが止まったので、到着したのだと階数も確認せず降りようとした。
ぐいっ。
**「えっ・・・」
坂本「まだ、ここじゃないから。」
**「あ、すいません。」
開いたドアから次々と作業服を着た男の人が乗ってきた。
**が慌てふためいてるとまたグイっと肩を引かれ、今度は坂本の腕の中にすっぽりとおさまっていた。
**「×〇△×〇△・・・・!?」
坂本「ごめん、少しの間、我慢して。」
2つほど階を上がると、作業着の男性たちは全員降りていき、再びエレベーターには坂本と**の二人きりになった。
すっ
**「あっ・・・・」
坂本は何事もなかったかのように**の肩を離した。
坂本「ごめんね、なんか人いっぱいきちゃったから(笑)」
**「あ、いえ・・・ありがとう・・・ございました・・・(照)」
**は顔を上げる事すら出来ず、もごもごとお礼を言った。こんなこと、坂本みたいな大人の男の人にとってはなんでもないんだ、そう思って、少しだけ胸が痛んだ。
―8階です
**「あ、こ、ここですね!」
**は坂本の表情は見ずにそそくさと降りて、会場への廊下を走る。
坂本はその後姿を見ながらゆっくりとエレベーターから降りると、さっきまで**を抱いていた手をほんの少しだけ握りしめる。
坂本「何年甲斐もなくドキドキしてんだ俺・・・。」