第2章 会場の下見。
バタンッ。
**「よいしょっと。」
無駄に思い資料を担いで、車から降りると、会場へ向かう。
駐車場から歩いて15分。
**「確か・・・この辺の・・・」
「**さん!」
聞きなれない声で名前を呼ばれ、驚いて振り向くと、
そこにはキャップにマスク、大振りの黒縁眼鏡の背の高い男性が立っていた。
不審者・・・?そう疑心を抱いているとぐいっと腕を引かれる。
「こっち。」
**「えっ、ちょっ・・・!」
近くのビルのエントランスに引きずり込まれ、自動ドアが閉まるとすぐエレベーターがあった。
エレベーターの上のボタンを押すと、ゆっくりマスクを外し、キャップを少しだけ上に上げて、微笑みかけてきた。
「こんにちは、お疲れ」
**「さ、坂本さん!!」
坂本「しー!!」
**は自分の声が思ったよりロビーに響いて驚きながら口を塞ぐ。
**「あの、どうして??」
坂本「うん、たまたま。俺も今日下見来ようと思ってて、なーんかイカツイ車停まったなーって思ったら、**さん降りてきたからビックリ(笑)」
エレベーターに乗り込むと、坂本はキャップとマスクをカバンにしまった。
坂本「今日、仕事は?」
**「あ、午前上がりにさせてもらって・・・」
坂本「そっか。」
穏やかな笑顔を向ける坂本を見上げた瞬間、坂本との距離の近さに気付き急に体が強張る。