第1章 私はもう疲れたよ
「凪沙ちゃん、これはどこに置けばいいかな?」
『え、あ・・・そ、こで』
「オーケー」
薬研にそんな話をされてから、
いまいちまともに燭台切光忠を見ることができない。
畑の雑草を引っこ抜きながら、
とれた野菜を縁側に置く燭台切光忠の背中を見つめた。
(まさか、人の身を持って、恋というものをするとは・・・)
時間遡行軍と戦うために顕現されてというのに。
(感情とは面倒くさい)
ブチッブチッと次々と雑草を引っこ抜いていく。
(まず感情とはなんだ?人間はよくわからんな)
なんだか悟りをひらいてしまいそうな考え事だとやや白目になりなが思っていると、
『ヒギャアアアア!!!』
「ワッ!ビックリした・・・」
首筋にひんやりとした何かを当てられ、
反射的に身体は跳ね上がり、叫び声が出てしまった。
「姉さーん!大丈夫ー!?」
『大丈夫~』
どうやら馬小屋まで響いていた私の声に反応した鯰尾くんが心配の声を掛けてくれた。
「ご、ごめんね」
『いや・・・大丈夫』
どうやら犯人は燭台切光忠だった。
彼の手には氷の入ったお茶があって、
「少し、休憩しない?」
と、眩しい笑顔で言うもんだから、
また私の心臓が火縄銃で撃ち抜かれた感覚に陥った。