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【刀剣乱舞】それはとても綺麗な【燭台切光忠】

第1章 私はもう疲れたよ


『私はもう疲れたよ』

「・・・」


あきらか面倒だというように目を細めてこちらを見る茶褐色のこの男。


『・・・そんな顔しないでよ』

「毎度同じ台詞を聞く俺の身にもなれ」


大倶利伽羅はため息をついて、お茶を啜った。

縁側には日光がほどよい温度で当たり、とても気持ちが良い。

季節も春ということで過ごしやすい。

短刀達はそれを良しとして元気に庭を駆け回って遊んでいることだろう。


だがしかし、私はどうだろう。


心の中はまるで曇天である。

理由は簡単だ。


『見せつけてくれるよね、朝からさぁ・・・』

「顔。顔やめろ。バレるぞ」


苦虫をかじった顔をしている私の視線の先には、

畑仕事をする光忠と、

我々の主の姿があった。

幸せそうに二人は笑い、すごく眩しい。


この本丸の主は20歳と若い。

黒く長い髪をなびかせ、白い肌は雪のようで、

その赤い唇は肌が白いせいもあってか、なおさら際立ち、小さい。

長いまつげは仲間が重症を負えば小さく震え、

ガラス玉のように透き通った瞳からは涙を流す。

しかし、凜とした姿勢は私たち刀剣をまとめ、

信頼の厚く、愛らしい主だ。


そして、そんな主と仲むつまじく会話する一振りは

長船派の一振り、燭台切光忠だ。

黒髪に色白、蜂蜜のような瞳。

伊達政宗の刀だった影響が強いのか、左目には眼帯をしている。

一目見た時はどこぞの厳ついあんちゃんが来たもんだと思ったが、想像とは裏腹にまさかの僕っこ。

洗濯、掃除、料理、裁縫なんでもござれ。

本丸の母と呼ばれるまでそう日は経たなかった。

容姿端麗、眉目秀麗。

そして温和な性格。


絵に描いたようなお似合いな二人。

まぁ言わずともわかるだろう。



この二人は、恋仲だ。

しかもなりたてほやほや。

昨日だよ。昨日。

ほやほや過ぎるよ。熱すぎるよ。

二人の幸せ記念日とも言える昨日、

私はこの人の身を得て初めて、







失恋というものをしたのだ。
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