第2章 4月『沈黙の少年』
「…瑞希?」
「迎えに…来た。」
「トーゲー!」
真っ白なもの…瑞希だった。
僕をすっぽりと包み込み、もたれ掛かって
ぎゅっと抱き締められる。
すると、周りから黄色い悲鳴が上がる。
2年生と3年生は階が違うから
3年生の瑞希がここにいるのは
とても意外らしい。
「あ、ちょっと斑目!!
俺はまだ草薙と話が…」
話を遮られた真田先生は
ムッと怒ったように口をへの字にする。
…感情が完全に顔に出ている。
全くもって純粋な子犬にしか見えない。
「あっちいけ……しっしっ。」
そんな真田先生を手で追い払う瑞希。
教師を手で追い払うなんて
良くやるなぁと瑞希に感心する。
「なっ!」
それは真田先生も同じだったようで
驚愕した表情で固まったままの真田先生を
置いて僕と瑞希はバカサイユに向かった。
「ねぇ瑞希。」
「………何?」
「そろそろ、腕離してくれない?重い。」
僕が瑞希の大きな手をぎゅっと掴んで言う。
ずっと上からもたれ掛かっているように
抱きつかれているのは辛い。
「やだ」
僕の心の中で3行羅列した
抱きつくのをやめて欲しい理由を
書いた文章は、『やだ』の二文字で
消し飛んでしまうのであった。