第12章 1月 『解け始めた氷』
「もし、本を読み飽きてしまいましたら、
七瀬さんに頼まれた作曲用のピアノも
用意してありますのでいつでもお申し付けください」
「…午前中は本を読むよ。あとは全部午後から。」
「……ああ、仙道さんがさんが
退屈しないようにと、いくつかイタズラを
校舎に仕掛けておいたそうですが、
昼からだと何人か犠牲者が出てしまいそうですね。」
「…もう、分かったよ。キヨのは午前中にやるから」
なんだよ、みんなして。
やることいっぱい用意してくれて。
「………愛されてるのかな、僕。」
「はい。それはもう。」
僕がドイツ語の本に目を落として呟くと、
永田さんがにこりと微笑んだ。