第2章 4月『沈黙の少年』
「それが出来ないから
に頼んでんのに…」
また頬を膨らます坂下を無視する。
もうすぐHRが始まる。
去年の担任は兄さんやB6を毛嫌いしていて、
僕を避けていたような奴だった。
まさか担任に嫌われるとは思いもせず、
やりにくいったらありゃしなかった。
今度は、マシな先生がいいな…と
心の隙間でそう思った。
「よぉーし、それじゃ、始めるぞ〜!」
そこに子犬のような元気な声が響き渡る。
オレンジのジャケットが似合う、
若い男が入ってきた。
確か名前は………真田、だったかな?
「あ、じゃあ。また後で。」
「…………うん。」
僕は坂下の方を見ず、
適当に手を振って返した。
始業式が終わり、チャイムが鳴る。
僕は鞄をそうそうに片付けて
教室を出た。
僕の担任は先ほどの
子犬のような真田先生だった。
確か二階堂先生と仲が良かった英語教師だよな
頭の硬いじいさんじゃなくてよかった。
「あ、おーい!草薙ー!」
突然後から呼び止められる。
振り返ると、真田先生がいた。
「…何でしょうか。」
僕は忙しいんだけど。先程からメールが
ひっきりなしに鳴っている。
内容はほぼ同じ。“はやく来い”である。
そりゃあ始業式をサボっているB6よりは
遅いに決まってるけど
僕だって担任は気になる。
ほかの事は面倒くさがりな方だけど、
始業式は気になるから出たかった。
「あのさ…その、これから一年よろしくな!」
子犬はにっこりと笑って言った。
その言葉になんの意味が
あるかは分からなかった。
ただ全員に振りまいてる言葉なのか、
それともB6の僕に言いたい言葉なのか。
「よろしくお願いします。」
あくまで端的に言葉を返す。
なにがともあれこの子犬のような瞳に
構っている暇はない。
「それでさ………」
しかし子犬はまだ話があるらしい。
尻尾を振って僕にニコニコ微笑みかけている。
面倒くさいなぁと思っていると、
どさりと上から真っ白なものが僕に
もたれかかった。
「…ん。。」