第2章 4月『沈黙の少年』
「…遅いぞ!
待ち干からびたじゃないか。」
「おはよう、皆。お待たせ。」
バカサイユに入ってすぐに
翼に遅いと言われてしまった。
というか…待ち干からびたって…。
バカサイユにはB6が既に全員揃っていて、
食事会を行っていた。
「あー!だだー!
ポペラ久しぶり!」
「…うん。昨日ぶりだね。」
手をブンブン振って合図をする悟郎に
軽く手を振り返す。
昨日までB6皆で一緒に遊びに
行っていたんだから…久しぶり、はないでしょ
「瑞希、ありがとな。呼びに行ってくれて。」
兄さんがにこりと笑う。
ああ、兄さんが瑞希に頼んだのか。
てっきり翼かと思ってた。
瑞希は「ん…」と返事をして
抱きついていた腕を緩め、僕を解放する。
そういえば、瑞希は僕と気が合うらしい。
…らしい、というのは
聖帝の中で1番瑞希が僕に懐いている事と、
前トゲーに『瑞希とは似てる』と
言われたことがあるからだ。
瑞希もそう思ってるらしく、
『僕と…トゲーと……。
…とっても、仲良し』
なんて言って、ふと会うと
抱きついてくるのはいつものことだ。
…そして、僕がなんと言っても
離してくれないのもいつものこと。
そのくせ、他のB6に言われると
すぐに離すのもいつものこと……。
「僕がやめて欲しいって
言ってもやめなかったくせに…」
はぁ、とため息を一つつくのも…以下同文。
僕は兄さんに手招きされて、招かれるまま
兄さんの膝の上に座った。
「はぁー相変わらずかわいいわー。
あったけぇー。」
座るや否やぎゅっと抱きしめられ
頭をくしゃくしゃと撫でられる。
「………ん。」
兄さんの手は暖かくて、なんだかホッとした。
兄さんの膝に座るのは好きだ。
兄さんの体温が感じられて、
ClassAにいる時に感じる周りの嫌な視線から
開放された気分だからかもしれない。
「あ、。なんか食べるか?
取ってやるよ。」
兄さんは一通り僕を撫でると、
目の前に並べられた超高級なランチから
兄さんは唐揚げを取ってくれた。
「ほら、あーん。」
「あーん…………ん、おいひい。」
唐揚げは下味がついていて、
甘辛くて僕好みだ。
流石山田さん。