第4章 6月『緊張』
翌朝、昨日の雨からうってかわって、
キラキラと晴れている空を僕は見上げる。
「兄さん、遅いなぁ………。」
いつもの時間になっても来ない。
家の前の道路に出るものの、
自転車は見えない。
「もしかして………まだ家で、」
……風邪で寝ている、のかな?
僕の野生の勘がそう囁いている。
それに根拠は無い。けど……
「一応……持ってこう。」
「兄さん、入るよ。」
20分くらい歩いた所にある兄さんの家に入る
合鍵を使うが、鍵は空いている。
「不用心………。」
忘れっぽい兄さんに言っても仕方ないけど、
もうちょっと気をつけないと、心配になる。
「…………ケホッケホッ…。」
部屋に入るとベットで咳をして
もぞもぞとしている兄さんが見えた。
ベットに近付き、枕に顔を押しつけて寝ている兄さんの額に手を差し込む。
「……熱い。」
…やっぱり風邪か。
「………?」
僕に気付いたのか、
枕から顔を上げて俺を見る兄さんの顔は
火照っていた。
……昨日風邪ひかないようにって言ったのに。
「兄さん、朝ご飯食べた?」
「……まだ………。」
「作ったら食べる?」
「……おう……」
「じゃあ作る。……冷えピタは?」
「……貼る…」
こちらに顔を向けてきた兄さんの前髪を
すこしずらして、
家から持ってきた冷えピタを貼る。
薬とか、ポカリとか、持ってきてよかった。
「………。」
「何?」
「卵粥…と……肉…がいい…。」
「分かった。」
そのあいだに熱測っといて、と
兄さんに体温計を渡してキッチンに入る。
えっと、冷やご飯と卵と……お肉は
小間切れでいっか。
「できたよ。」
兄さんのご要望通り、お肉を入れた
卵のお粥をつくった。
「…………ん……。」
兄さんは体温計を僕に渡して、
ベットからゆっくり起き上がった。
体温計には38度、とかかれている。
体を鍛えている兄さんにしては高熱だ。
「食べれるだけでいいから。」
「…………ああ……。」