第4章 6月『緊張』
(翼視点)
が一に抱きついた時、
ああ、もしかしたらと思っていたんだ。
予感はあった。
一が猫を探しに行っていていなくて、
かつ天候は雨だ。
瞬の肩にが理由もなく
頭を乗せるなんて
アレしかありえない。
「…どうした?今日は甘えただな。」
「兄さん……ぎゅーして。
…なんだか………さみしい。」
「…仕方ねぇなぁ。ぎゅーっ……と。」
「……ん。あったかい……すき…」
「俺も…好きだぜ…………。」
「「「「はぁ………」」」」
全員のため息がバカサイユにコダマした。
始まってしまった。このバカップルの寸劇が。
俺達が呆れる中、口をパクパクとさせて
驚いているものが一人。
「なっなっなっ……は、草薙君!!?」
「………、…よしよし…」
「……んん……兄さん………。」
「き、聞こえていないみたいね………。」
担任は兄弟の姿に唖然としてどうしていいか
分からないようだ。
ソファーで抱き合っている兄弟に
近づこうとする担任を俺が止めた。
「担任…放っておけ。一時間ほどしたら
元に戻る。」
「え?そ、そうなの…?」
「そうか、アンタは知らなかったな。」
「まぁ、すぐに慣れるよ、センセ。」
「ああなったら手ェつけられねェしナァ…
オエッ……」
B6もそれぞれ、呆れてものが言えない様子だ
先程から抱き合っている二人の周りには
何故か薔薇でも舞っているかのような
オーラが見える…気がする。
「…どういうことなの?
二人はいつもこんな感じなのかしら?
一緒に登校したり、仲が良いとは
思っていたけど………」
担任が考え込むように呟いた。
はぁ…これはちゃんと説明してやった方が
いいかもしれんな。
「いや、いつもっていうワケじゃないよ。
今日は雨だしさ。」
「雨?……天気が関係あるのかしら。」
「フン……担任。俺から説明してやろう。」
ソファに座ったまま、顎に手を当てて
決めポーズをする。
フッ…今日も俺はPerfectだ!
「永田!説明しろ!」
「…かしこまりました、翼様。」
「…って永田さんがするのか…。」
瞬が少々冷たい目で俺を見る。
…仕方がないだろう。
俺にもよく分からんのだ。