第4章 6月『緊張』
「お、チャイムか。じゃあ今日はここまで。
続きは次回だな。」
チャイムと同時に九影先生がそう言って、
皆席を立つ。
ありがとうございました、という
形式的な挨拶をして、授業が終わった。
「………ふぅ。」
次は……地理か。
教科書を片付けて、地理の準備をする。
地理って教科書の他に地図帳とか
いろいろあって机に棚ができちゃうよね。
教科書を出したところで、
机に影が入る。
「。」
顔を上げると、九影先生が立っていた。
ただでさえ大きいのに、
座ったまま見上げると、
ものすごく大きく感じる。
「黒板は全部写したか?」
「はい。」
「…んなら、最初のとこ、分かんねぇだろ?
放課後ちっと説明してやるから
理科室に来いよ。じゃあな。」
「…別に大丈夫です…………って、
行っちゃった。」
九影先生の黒板、分かりやすいから
見ればわかるし、説明いらないのにな。
でも、もし行かなかったら怒られるだろうし
面倒だけど言っておくか。
きっと、10分くらいで終わるだろう。
休み時間になり教室は騒がしくなる。
携帯を覗き見ると、兄さんからメールで
『にゃんこ救出完了!』の文字と、
ベトベトに濡れた兄さんと猫が
ニコニコ笑ってる写真が送られてきた。
『良かった。
2人とも、風邪ひかないようにね。』
と返信する。
すぐにまた返信が来て、
『濡れたから予備の制服に着替えて行くから
昼飯には間に合わねぇかも。』
と、連絡が来た。
ああ、お昼、兄さんいないんだ。残念。
朝から会ってないからか少し寂しい。
放課後だったら、兄さんに会えるかな。
今日は雨だからなんだか、
人肌が恋しい。
寒いわけじゃないのに、おかしいな。
外を見ても雨が止む様子はなかった。