第4章 6月『緊張』
「………まぁいいわ…。それで、どう?」
「僕も出ない予定です。」
「ええっ、そうなの!?
真田先生、君を引き抜くって
張り切ってたのに…。」
あの人どれだけ職員室で
僕の事言いふらしてるんだ…。
衣笠先生といい、南先生といい、
聞かれすぎでしょ。
「…張り切っていて、僕を引き抜くのも
成功したって言ってました?」
「あ……それは、
聞いていないかも……。」
「………そういう事です。」
僕が先生から目を離す。
隣の瞬はベースの手入れが終わったらしく、
片付け始める。
「…………ん。」
瞬がベースを片付け終わったのを見て、
瞬の肩にこてんと頭を乗せる。
兄さんがいなくて人肌恋しいから
このくらい、いいよね。
瞬も少しだけ眉を動かしたが、
僕の頭をどけようとはしない。
「……まぁ、が出るなら
出てやってもいいがな。」
「………たしかに。」
瞬と瑞希が呟く。
「が出ると言ったら、
一も出ると言うだろうしな。」
「………それ、本当!?
君!
ClassXの明雲は君に
かかっているわ……お願い!」
「無理に決まってんダロ!!
コイツは高校になってから体育祭に、
1度もちゃんと出た事ねェんだゼ?ケケッ」
キヨがケラケラと僕を見て笑った。
間違いなく馬鹿にしている。別にいいけど。
「えっ…そ、そうなの!?君!」
「ちゃんと出ていないんじゃなくて、
聖帝の姉妹校から来た
外国の来賓の人の接待を買って出てるだけ。」
「……とかいいつつ、それを理由に
今まで1度も参加した事ないだろう?」
「…………………。」
翼に痛いところをつかれて黙ると、
南先生が手を合わして懇願する。
「じゃ、じゃあ、
今回からちょっと競技やってみる、とか
どうかしら?
瞬君も瑞希君も、君が
出るなら出てくれるんでしょ?」
「………それが出来たら、
の話だがな。」
瞬は南先生にニヤリと笑う。
僕は瞬にもたれたまま言い放った。
「…………絶対ヤダ。」