第4章 6月『緊張』
「おや、さんでしたか。
どうぞ。」
授業後、
バカサイユに来ると、永田さんが
招き入れてくれた。
「皆いる?」
「ええ、南先生もいらっしゃいますよ。」
『だから!それを言うなら
お茶の子さいさいだって
言ってるでしょう!!!』
永田さんの言葉通り、
部屋の方から南先生のツッコミが
玄関まで響いてきた。
「……大きな声。」
「フフッ……そうですね。では、傘は
お預かりしておきます。」
「ありがとう、永田さん。」
永田さんに傘を渡して、部屋に入る。
南先生の高い声と、皆の騒がしい声が
キーンと耳に響いた。
ClassAから…急にここに入ると、
すっごく騒がしく感じる………。
「もう!せっかくだし
出てちょうだいって言ってるのよ!」
「フン…時間の無駄だ。
マネーイズタイム、だな。」
「それを言うならタイムイズマネー!」
「俺にとっては、時間よりも金の方が
大事だから、逆にした。」
「勝手に変えたら駄目よ!!」
瞬がベースを弾きながらにやりと笑い、
それに対して南先生がぷんすか怒っている。
「……南先生は雨でも元気ですね。」
僕が声を掛けると、
皆が僕の方へ目が向いた。
「なんだ、か。
一ならいないぞ。」
「………別にいいけど…どうして?」
「なんかね、木の上で猫が
降りれなくなっちゃったって
タマから連絡が入ったんだって!
濡れて風邪ひくといけないから
今すぐ行ってくるって言ってたよー。」
「…そっか。分かった。」
雨の中猫を助けに行くなんて、
兄さんの方が風邪引いちゃわないかな……
ちょっと心配。
適当に空いている所を見渡し、
瞬の隣が空いている事に気付く。
「………隣、座るね。」
「ああ。」
瞬は僕に構わずベースを触っていた。
隣に座るとちらりと見て、
またベースに目線を戻す。
「………あ、そうだ。
君は体育祭出るの?」
「え?」
南先生に唐突に聞かれて、首を傾げると
反対側のソファーに座る翼が不満げに言った。
「担任が出ろ出ろと煩いんだ。
も何か言ってやれ。」