第12章 1月 『解け始めた氷』
「………おまたせしました。
みなさん、どうぞお入りください。」
「なう〜」
「パウ!!」
「ピィー!」
「あんまりはしゃいじゃダメからね…って
聞いてないや。」
永田さんがバカサイユの鍵を開けてくれて、
僕達は中に入った。
初めて入るタクは嬉しそうに鳴いて
中に飛んで行き、
タマとパウも我先にと駆けて行く。
………まぁ、いいか。
「…永田さん、悪いんだけど、
タマやパウ、トゲーのトイレと…
タクの止まり木、用意してくれないかな。」
僕がそう聞くと、
永田さんがにやりと笑う。
「ええ、既に準備出来ております。」
「…………え?既に?」
「はい。既に、です。」
永田さんの当然のような言葉に
目をぱちくりさせた。
……いつの間に準備したんだろう。
半信半疑のまま、バカサイユに入る。
すると、いつもと違う光景が広がっていた。
「…………ほんとだ。」
部屋はいつのまにか動物仕様になっていて、
タマの爪とぎ用の木付きキャットタワーや
タクの……本物の木を使った止まり木、
パウが遊べるボールや綱まである。
「パウ!パウー!!」
「にゃあ〜〜ぅ、なう〜〜」
僕よりも早くついていたみんなは
既に遊び始めていた。
「……いつの間に準備したの?」
「……必要なものを先読みして
主が必要と思う前に予め用意する…
それが秘書としての務めでございます。」
半信半疑な僕に、永田さんがにやりと笑う。
「僕は主じゃないよ、永田さん。」
「ですが、翼様に
さんに尽力するよう
言われておりますので。
私に出来る事はやらせていただきます。」
口角がさらに上がった永田さんは
どうやらわざとやっているらしい。
今日は永田さんとバカサイユを
1日貸し出してもらえることになっている。
ちなみに永田さんは
好きなように使えと翼から許可済だ。
翼が、『も1回くらい
「永田!Drinkだ。」とでも言ってみればいい
永田には、俺と同じ扱いをするように
言ってあるから、安心して使え。』
なんて、言っていたけど…
急に永田さんに命令するなんて出来ない。
なかなか難しいものだ。