• テキストサイズ

弟バカと兄バカ【VitaminX 原作沿い 】

第12章 1月 『解け始めた氷』









「……誰もいないよね。」


リムジンを止めて、外の様子を伺う。

土日で学校が休みの今日は
生徒も先生も少ない。

一応部活動の生徒がいるはずだけど、
もうそれぞれの場所で部活動が始まる時間。





「さん、どうぞ。」



「ありがとう。……みんな、降りよっか。」


永田さんが開けてくれたドアから顔を出す。

僕が手を出すとそこにトゲーが乗る。

パウは嬉しそうに尻尾を振って降り、

そして、僕が手袋をはめると、
そこにタクが乗った。


「……ピーィ!」


「こら、ダメだよ。ここは学校だから。」



タクが僕の肩でバサバサと羽ばたくのを
辞めさせる。


一瞬で、車内に鷹の羽が舞った。



「ピー?」


「まだリハビリ中でしょ。
怪我、治ってないんだから、だめ。」


「ピィーッ!」


「怒ってもだめ。」




むすりとしかめっ面のタクにそう言った。




タク、というのは、
僕が飼っている鷹の名前だ。


………あの、兄さんと喧嘩した時に
出会った鷹は手術も成功して、元気になった。



ただ、やはり翼の骨は折れてしまっていて、
元通りには飛べないと
獣医さんに言われてしまった。


僕が獣医さんに事情を説明すると、
安楽死させるか、
ほとんど飛ぶ必要のない花鳥園に送るかを
提案されたが、


僕も兄さんも答えは決まっていて、
彼を引き取ると答えた。





そんなわけで、鷹を1匹飼う事になり、
『タク』と命名して僕の家に来た。


ちなみに命名は兄さんなのだが…



「………兄さんのネーミングセンスのなさって
言ったら………。」


ピーピー鳴くから『ピーちゃん』にするとか、
オスだから『ピーくん』にするとか……

鷹だから、『たかくん』、『たかピー』……


酷い名前ばっかりで。


………ま、
親友のネコにはタマ、
ペリカンをペリーさんと
呼んでる兄さんにとっては
妥当なあだ名なんだろう。



僕はもっとカッコイイ名前が良かったけど、
兄さんの物覚えの悪さから言って
簡単な名前が良いだろうと
僕が軽く誘導してこの名前になった。



『たか』から少しだけ文字をずらした『たく』
なら、すぐに覚えられるだろうと
思ったからだ。



/ 427ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp