第12章 1月 『解け始めた氷』
「………暖かいね。トゲー。」
「トゲトゲー!」
瞬に言われた通り、30分くらい我慢して、
スーパーの売店で暖かい紅茶を買った。
トゲーには、ぬるま湯で、
ミルクを入れるようの
小さな金属のコップにいれてもらったから
トゲーも嬉しそうだ。
「…………これ、ほんとに紅茶かなぁ?」
香りも味も、安っぽい。
多分ティーパックの、安いやつなのだろう。
瞬の言う通り、持ってこれば良かった。
「…………でも、あったまる。」
「トゲー……。」
ぬるま湯を両手に持ったトゲーが一息をつく。
暖かくて、うっとりしているようだ。
「………あと20分くらいしたら、
悟郎達が来るかな。」
「トゲ?」
「うん。時間が違うんだ。
受ける教科が違うから。」
「トッゲー、トゲー?」
「………うん、帰ってくる時間も違うよ。
確か、キヨが1番早かったっけ。」
「トゲッ?」
「……ふふっ、大丈夫だよ。
こういう時、キヨちゃんと来るもん。
きっと、南先生を見て、
……オマエのブチャイクな顔
見に来てやったゼー!キシシッ
って、言いながら。」
「トゲゲー!!」
「あ、似てた?……やったぁ。」
トゲーと2人で笑い合う。
トゲーの言葉が分からない他の人が、
こちらをチラチラ見ながら
スーパーで買い物を済ませていく。
「………あと10分くらいしたら行こっか。」
「トゲー!」
でも、瑞希抜きでトゲーと喋れる事、
滅多にないんだもの。
僕は周りの目も気にせず、
トゲーとの談話を楽しんだ。