第12章 1月 『解け始めた氷』
「試験終わったら、新曲手伝えよ?」
「うん。」
新曲のピアノ主体のバラードは
まだ完成していない。
試験勉強とバンドとバイトの両立で、
瞬はずっと忙しいため、
僕がほとんど作詞作曲を受け持っていた。
1度やったことがあるとはいえ、
何も無いまっさらな所から
曲を生み出すのはとても難しい。
何曲も生み出してきた瞬が
物凄い超人に何度も感じたものだ。
「じゃあな。」
「うん…いってらっしゃい。」
瞬が紅の長い髪を揺らして
僕に背を向けた。
ぼんやりとそれを見送る。
瞬の長い髪はいつ見てもカッコイイ。
………僕も、髪伸ばそうかな。
瞬の後ろ姿を見ながら、僕はそんな事を
考えていた。