第12章 1月 『解け始めた氷』
その日の放課後。
『僕が…助けてあげる……。』
研究所であった事を思い出しながら歩く。
「…………あの男の子、瑞希………だったんだ。」
今ならはっきり思い出せた。
あの小さい男の子は、瑞希だ。
『僕とはよく似ている……』
『とっても仲良し……………』
瑞希がいつも呟いていた言葉を思い出す。
今から考えれば…人嫌いの瑞希が、
特定の人間と仲良くなろうとするなんて、
…おかしな話だ。
今まで、何も疑問に思わなかったけど、
それは…昔、僕と出会っていたのを
覚えていたのかもしれない……。
…………どうして今まで気づかなかったんだろう
…どうして、今まで思い出せなかったんだろう
初めて会った時も今までも、
全く気づかなかった………。
瑞希は、気付いていたのに…………。
「……………僕、もしかして
記憶力悪いのかな。」
僕がそう呟くと、
前からふわふわとした声がする。
「……の記憶力は、
一般人並み………そう落ち込むことはない。」
「あ………」
ふと顔を上げると、瑞希がいた。
「……えっと……み、ずき。」
思わず、吃ってしまった。
実は、瑞希の事、思い出した………なんて
言えなくて、僕がもごもごと口を動かすと
瑞希が笑った。
「………思い出した?僕の事。」
「…え…あ…その。」
「………ふふ、、面白い顔。」
瑞希は笑って僕の手を取って歩き出す。
僕も、隣に続いた。
瑞希は機嫌が良いらしく微笑んでいる。
怒って…ないのかな。忘れてたこと。
「…ごめん。…忘れてて。」
「ううん…僕も昔はの事を
考えないようにしてたから、大丈夫。」
「そうなの?」
「うん………施設の事、思い出すから…。」
瑞希は少し悲しそうに目をそらす。
施設は僕も1日しかいなかったけど、
嫌な思い出だし、瑞希はあそこに
ずっといたんだと思うと…寒気がする。
瑞希にとっては、施設はあまり
いい思い出じゃないみたい。