第12章 1月 『解け始めた氷』
翌朝。
兄さんに昨日の話を聞いてみた。
「………あー……んな事もあったような…
なかったような。
……ま、なんとなくアメリカの
研究所に行ったのは覚えてるけど、
それ以外はほとんど覚えてねぇな。」
「…僕も、そのくらいしか覚えてなかった。」
今は、つい先日の事のように
赤裸々に思い出せるけど、
そこまでは全然覚えてなかったし。
「でも…そっか。の緊張は
そこでのウマトラってやつだったんだな。」
「……うん。そうだったみたい。」
それを言うならトラウマ……という
言葉をごくりと飲み込む。
「……でも、今なら、人前に立っても
怖くない気がするんだ。
……自分が怖い理由も、怖くない理由も、
全部……分かったからかな。」
僕がそういうと、兄さんが笑った。
「じゃあ、真田先生すげーじゃん。」
「……なんで?」
「だって、に緊張しいな性格は
生まれつきじゃなくて、克服できる!って
言ってたの、真田先生だろ?
俺もも、そんな訳ないって
思ってたのにさ。」
「んー…………まぁ、確かに。」
真田先生の言葉が正しかった……
………認めたくないけど。
僕が唸って呟くと、
兄さんは僕の頭を撫でる。
「ククッ………可愛いなぁは。」
「かわいくないもん。」
僕が怒ると、
兄さんはにやにやと笑った。
「俺、のそーゆー顔、
結構好きだぜ。」
「…………むぅ。」
僕が膨れれば膨れるほど、
兄さんは笑うのだった。