第12章 1月 『解け始めた氷』
………あの頃は、
僕の言葉が分かる兄さんと…あの男の子以外は
みんな僕の事を睨んでいて、嫌われている。
本当にそう思い込んでいた。
それがいつしか凝り固まって、
たくさんの睨んだ目線を浴びながら
人前に立つことが
苦手になってしまったんだろう。
「………僕、みんなに睨まれてる気がして、
人前に立つことが嫌だった……。」
「…………それが、僕の…緊張の理由。」
ずっと、ずっと考えていた事の
僕なりの答えが出た気がした。
そして、それと同時に………
「……………でも、みんなは僕の事、
嫌いじゃない。睨んでない。」
その原因を諭すように、
否定している自分もいた。
文化祭で最後にステージで挨拶した時。
みんな、僕の事を見ていた。でも……
その目は、暖かかった。
女の子のあの声は苦手だけど、
あれは僕が嫌いなんじゃない。
……むしろ、好きな方って、
自惚れてもいいのかな。
「……………。」
勿論、岡崎とか、他の生徒でも……。
僕の事を好きじゃない奴等もいる。
でも。
「……………それ以外の大半の人間は、
僕の事を理由もなく嫌っていない。
睨むはずがない。
だから……僕が他人を怖がる理由は…ないんだ」
そう口に出すと、今までの
背中に乗っていた重い荷物を下ろしたようで
スッキリする。
紅茶はすっかり冷めてしまって、
台無しだったけど、僕の心は晴れやかだった。