第2章 4月『沈黙の少年』
その頃、教室では…………
(南視点)
「あれ!?草薙君は?」
補習のため教室に行くが、
草薙君の姿は無く。
数人の生徒と困った様子の真壁君、
それから仙道君がいた。
「担任か……。一ならと
バカサイユにいるぞ。」
「そうなの?ありがとう!」
何がともあれ、教えてくれるなんて
ラッキーだ。
私がお礼を言って教室を出ようとすると、
仙道君に止められた。
「待てよブチャ!
バカサイユには行っても無駄ダゼ。」
よく見ると仙道君も不機嫌そうだ。
いつも悪戯をしようとニヤニヤしている口は
への字になっている。
「どうして?」
「…………兄弟お湯いらずというヤツだ。
………放っておけ。」
真壁君ははぁ、とため息をついた。
なんというか、やるせない顔だ。
………それよりも!
「…それって、水入らずって言いたいの?」
「ーShut Up!!水もお湯も一緒だろう!」
「違うわよ!!」
ともかく真壁君少々機嫌が悪いようだ。
兄弟水入らず、という事は
草薙君も一緒なのかしら?
…ううん、だとしても、
草薙君に毎日毎日補習から
逃げられている今、
バカサイユにいるという情報だけでも
私にとっては重要だ。
「…とにかく、バカサイユに行ってみるわ。
無駄だとしても。」
私がそう言うと、
真壁君が苦虫を噛み潰したような顔をした。
「…………チッ、永田!」
「はい、翼様。」
「………担任を教室から出すな。」
「…かしこまりました、翼様。」
永田さんが教室の出口の前に立ち、
出入りを禁止するように止めた。
先回りされて私は
教室から出られず、真壁君を睨む。
「ーーえっ!?ちょっと、真壁君!?」
「……恨むならに言え。
…俺は頼まれた事をしているだけだ。」
「…えっ!?」
意外な名前に驚いた。
君って、
こんな事する子だったかしら!?