第12章 1月 『解け始めた氷』
がそのまま黙っていると、
男の子は続けて口を開いた。
「…………もし、このテストでいい点とったら、
研究所に入れられる。
もしそうなったら、
君は日本にいる家族と離れ離れになる。」
「………………!」
男の子の話は信じ難いものだった。
お母さんは、アメリカの研究所で
テストを受けに行くと聞いていただけだから。
テストの結果次第で、ここに
居なきゃいけないなんて、
そんなの……知らなかった。
「……そんなの、嫌でしょ?」
「…………ん。」
は家族の顔を思い出して、頷いた。
なにより、こんな真っ白な場所で暮らすなんて
絶対に嫌だった。
僕の顔を見て、
男の子はふわりと微笑む。
「……僕が助けてあげる。」
男の子は、どの問題で間違えたらいいのか、
どの問題を正解したら
良いのかを教えてくれた。
「………分かった?」
「………うん。」
が頷くと、
男の子はまた無表情に戻る。
「………最後に、
ここの大人の言うことに、
返事をしちゃだめ。
ずっと黙ってれば…いい…。」
「…………わか、た。」
が頷くと、
男の子は優しく頭を撫でてくれた。
「………いい子、いい子。」
「…………。」
その手は一よりも優しくて、
少し冷たかった。