第12章 1月 『解け始めた氷』
「それじゃあ。
夕方に迎えに来るわ。」
「テスト頑張れよ!!!」
「……………ん。」
家族と別れて、
は研究施設に入った。
建物はとても大きくて、
頑丈な門があるその施設は
まるで要塞だった。
「やぁ君。いらっしゃい。
ここは頭の良い子達の事を
調べる研究所なんだ。
ほら、お友達もいるよ………瑞希君。」
「…………………。」
「ああ、もう、瑞希君ってば。
………ごめんね。人見知りで。
これでも、今日は機嫌は良い方だから、
許してくれ。」
中に入ると、すぐに研究員さんに連れられた。
研究員さんはと手を繋いで
スタスタと廊下を歩いていく。
の隣には、先程の男の子が歩く。
廊下には白衣を着た研究員さんが
たくさんいて、怖くて、帰りたかったけど、
研究員さんはの手を引っ張って、
離してくれなかった。
「……さぁ、ここが実験室だ。
まずはここでテストを
受けてもらいたいのだが……。
まだ準備が出来ていないようだ。
少し待っていてくれ。」
『実験室A』と書かれた部屋に入ると、
研究員さんはの手を
離して行ってしまった。
何故か隅から隅まで真っ白な部屋で、
そこの真ん中に真っ白な机と、椅子がある。
全てが本当に白くて少し眩しいくらいだ。
「………草薙…君?」
が周りを見渡していると、
隣にいた男の子が声をかけてきた。
「………。」
は黙って男の子に顔を向けた。
男の子はジッとの目を見ている。
「………君…日本から来たの?」
「……………。」
「…………そう。学校はどこなの?」
「………………。」
「………聖帝学園?……ふうん。」
はいつもの通り、
全く喋らなかったし、喋るつもりはなかった。
………だが、男の子は不思議なくらい、
の言葉を全て汲み取っていた。
それが、自分の兄に似ていて、
親近感が湧く。
この誰も知り合いがいない真っ白な部屋で、
唯一の味方のように見えた。