第12章 1月 『解け始めた氷』
坊っちゃまは私と奥様の顔を
一通り見た後、
スタスタとリビングを去っていき、
一坊っちゃまの元へ行ってしまいました。
ほんの少しだけ、その時、
坊っちゃまから
私達に対する恐怖を感じました。
昔から何事にも仏頂面の子でしたが、
この日は少しだけ表情が歪んでいたのを
よく覚えています。
「…………………はぁ。」
それを見て、奥様が頭を抱える。
「…………連れて行くんじゃなかったわ。」
「奥様、とりあえずお紅茶でも飲んで、
少し落ち着いてくださいませ。
それで…もし………よろしければ、
私もお話を聞きたいのですが……。」
「いいわよ。話した方が、楽かもしれないから
でも、……私も一も、
研究所の中には入れなかったの。
入ったのはだけ。
私が知っているのは、一がから
聞いた話だけなんだけど。」
奥様はハーブティを1口飲んで
私にアメリカでの出来事を
聞かせていただけました。