第12章 1月 『解け始めた氷』
一坊っちゃまは坊っちゃまの
世話を焼いて焼いて……。
食事や着替え、添い寝まで
やってあげるほどでした。
坊っちゃまも
一坊っちゃまにいつも甘えておりました。
そんな2人が離れ離れになるなんて……。
「………そんなの、私だって悲しいわ。」
奥様は首を振った。
…ああ、そうでしたわ。
1番悲しんでいるのは、母親である奥様です。
「………でも、その方が
のためになるならって……。」
「……奥様……。」
奥様が言うには、
折角の素質を持っていても、
坊っちゃまにとって
最適な環境でなければ、意味が無いという。
坊っちゃまのためなら
その方が良いと…………
でもまだ坊っちゃまは6歳…。
親元を離れるには、早すぎる年齢でございます
「………とにかく、が
アメリカにいかせるべきかどうかは、
1度研究所に出向いて、調べてもらってからに
しようと思ってるの。
……一も連れてくつもりよ。
あの子にしか、
の言葉は分からないから。」
「………かしこまりました。」
奥様の言葉に私は俯いた。
もし、坊っちゃまが、
アメリカに行ってしまったら……。
家政婦とはいえ、簡単には納得出来ませんわ。
「……おかぁさーん、なんかね、
あめりかのひとからでんわだよー。」
「あぁ、一。ありがとう。
電話、代わるわね。」
一坊っちゃまがリビングから
顔を出して奥様を呼び、
奥様とこの話は終わってしまいました。
何かと急に決まったため、
バタバタとした日が数日続き、
奥様と一坊っちゃまと坊っちゃまが
アメリカから帰ってくるまで、
私はこの家でずっと皆様の
お帰りを待っておりました。
坊っちゃまが
心配で心配でなりませんでしたが、
私には待っていることしか
出来ませんでした…………。