第12章 1月 『解け始めた氷』
(回想 家政婦視点)
あれは、坊っちゃまが
小学校に上がってすぐの頃でございます。
奥様から、
のIQテストの結果を持ってきて
見せていただきました。
「………ねぇ、これ見て。」
「あら、これは……
坊っちゃまのテストで
ございますか?」
「ええ。それでほら、
ここの推定IQの所……。」
「…ええっと…………に、250?」
そこには推定IQ250と書かれておりました。
他の子との平均値よりもずば抜けて
坊っちゃまの値だけが
伸びておりました。
「そうなの。普通じゃ有り得ないって、
昨日学校の先生に言われてしまって…。」
「普通の人じゃない?
つまり、坊っちゃまは変人だと?」
「そういうわけじゃないわ。
ただ、天才かもしれないってだけで……。」
「……そうでございましたか。」
一坊っちゃまに比べたら、
坊っちゃまは何でも
覚えが良い方だし、
練習熱心なピアノも
どんどんと上達しておりますが……。
まさか、そこまでだなんて………。
「………それで坊っちゃまには?」
「ううん、何も話さないつもり。
もし…本当にIQが高かったら、
はアメリカの研究所に通わせなきゃ
行けなくなるから……」
「あ、アメリカですか!!?」
「ちょっと!声が大きいわ。
に聞こえたらどうするの。」
「も、申し訳ございません。」
思わず口を抑えた。
坊っちゃまが、
アメリカに行ってしまうなんて…
今まで考えたこともなかった。
私は坊っちゃまが生まれた時から
見守っていたというのに。
「…一坊っちゃまは、
納得されてるのですか?」
「一?どうして一が?」
「一坊っちゃまは、坊っちゃまを
たいへん可愛がっておられます。
奥様は、仲良く眠っている様子しか
見ていないでしょうが、
お二人はいつも一緒です。喧嘩1つしません。
………きっとこの事を知ったら、
一坊っちゃまが悲しみますわ。」
一坊っちゃまは坊っちゃまが
生まれてから、
いつだって坊っちゃまの
傍にいらっしゃいました。