第12章 1月 『解け始めた氷』
「………あァ?おめぇら
こんなトコで何してんだァ?」
後ろを振り向くと、
キヨがこちらを睨んでいた。
「…あ、キヨ。」
「誰ダヨ、ソイツ。
レイに用でもあんのかよ。」
キヨは眉間にシワを寄せたまま
僕の隣まで歩いてきた。
目線は1ミリも離さず、武川君を睨んだまま。
「ヒィッ!せ、聖帝の悪魔……っ!」
武川君はキヨを見てビクリと肩を震わせる。
それに追い打ちをかけるように、
キヨが水鉄砲を武川君に吹きかけた。
「ぎゃあっ、つっ冷たいっ!!」
「ギャハハハハハ!悪魔って分かってんなら
とっとと去りやがれェーー!!」
「ひぃいいっ!!」
武川君はビショビショになった顔を
手で拭いながら走り去っていく。
「………………。」
「ケッ…ざまぁ見やがれ!」
多分、キヨ…僕を庇ってくれたんだろうけど。
武川君、僕に何も悪い事してないのにな。
「…………ありがと、キヨ。」
それでも一応お礼を言った。
ここで、ホントは
もう少し話したかったかな、なんて言ったら、
僕も水鉄砲喰らいそうだったし。
僕がそう言うと、
キヨは僕をチラリと見てから
視線を戻した。
「オイ…。オレ様達はもうあと数ヶ月で
卒業なんだぜ?
自分の身は自分で守りやがれ。ヴァーカ!」
「………うん。」
………卒業、その言葉がぐさりと僕の胸を抉る。
あと2ヶ月と少しで、
兄さん達は卒業してしまう。
翼も、
瞬も、
悟郎も、
キヨも、
瑞希も、
…………兄さんも、
いなくなってしまう。
残るのは……僕、1人。
「………分かってる。」
僕は投げやりにキヨに言い放った。