第12章 1月 『解け始めた氷』
(視点)
1月も半ばが過ぎた、まだまだ寒いある日。
昼のチャイムが鳴ると
皆それぞれ食堂ヘお弁当へと動き始めた。
………勿論、僕も。
「………バカサイユ行こ。」
僕がそう一人呟いて、教室を出る。
さて、今日の山田さんのランチは
なんだろうか。
「待てよ、。」
肩を掴まれて、
無理矢理こちらに向かされた。
「………坂下…何?」
僕が首を傾げると、
坂下は苦虫を噛み潰したように
僕に詰め寄った。
「最近、ハジメ先輩が
ストリート行ってないって、嘘だろ?」
「本当だよ。
もう、しばらく行ってないと思う。」
「……じゃあ、岡崎先輩との喧嘩は?」
「しないよ。相変わらず煽って来るけど、
無視してる。……僕も同じ。」
最近坂下がイライラしていたのは知っていた。
授業もあまり聞いていないくらいだったから。
その理由はやっぱり、
兄さんの事だったんだ。
坂下の頭の中は、兄さんばかりだから。
「なんで、どうして?
俺、ハジメ先輩の喧嘩、もっと見たいのに!」
「…僕は、見たくない。」
「うるさい!
の意見なんか、聞いてない!」
坂下が声を荒らげて僕を睨む。
周りの生徒が廊下を歩く中、
不思議そうに僕らを見て通り過ぎていく。
「……坂下も分かってるはずでしょ?
兄さんが、…あの事件で
本当は何もしていないこと。
……今までがおかしかったんだ。
兄さんが暴力を振るうなんて。」