第11章 12月『聞こえなかった兄の声』
「……それより君をヴィスコンティに
引き抜くってどういうこと?
君、楽器出来るの?」
「……………。」
「………なんだアンタ。知らないのか。」
瞬とが呆れた顔をする。
俺もとっくに知ってたと思ってたけど、
そういえばこの事話す機会あんま無かったな。
「いいか?。」
「別に……今更。どっちでもいい。」
一応に許可を取った瞬が
口を開く。
音楽の事になると、瞬の奴、スゲー喋るよな。
「実ははピアノ弾きでな。
キーボードも出来る。」
「そうなの!?全然知らなかったわ。」
それに補足するように、俺も口を開いた。
「あと…鍵盤ものなら、
なんでもある程度は出来るぜ。
エレクトーンとか、シンセサイザーも、
うちにあるんだよ。」
「エレクトーンって、足も使うのよね?」
「おう。あれ最初苦戦してたけど、
すぐマスターしてたぜ。
確か、小学校の時か?」
「………そう。ピアノの合間に、気分転換で。」
「ピアノの気分転換でエレクトーン?
もうよく分からないけど、
すごいわね、君……。」
「ああ。俺もコイツの音楽の才能は
認めてる。……ただ、本人のやる気は
無いようだが。」
「…ステージなんて、まっぴら御免。
僕は、家の中で好きなの弾いてるだけでいい」
南先生が目を丸くしてから、
………そして、ハッと何かを思いつく。
「………そうだ!来年の聖帝祭は、
君のピアノ演奏会を
やりましょう!
私、また今年みたいに生徒会を
説得してみせるから!!」
「……………。」
南先生のその言葉での
ポーカーフェイスは崩れ、
眉間のシワが深く深くなっていく。