第11章 12月『聞こえなかった兄の声』
「今日も最高だったな、瞬!」
「……サンキュ。」
ステージから降りてきた瞬に声をかけると、
瞬がふわりと笑った。
「………。」
ふとを見ると
瞬を見たまま黙っている。
「どうした?」
「…瞬の演奏…いつもと違う。」
「…なんだと?」
瞬の眉間にシワが寄る。
俺は音楽の事は、詳しくはよく分からない。
だが、が違うといえば、
違うのだろう。
………が、仏頂面で言うは
瞬を非難しているように見えた。
「そうかなー?ゴロちゃんは
スゴく良かったと思うよ!シュンの演奏!」
「…俺も良かったと思うがな。」
翼と悟郎がそう言うと、も
こくりと頷いた。
「うん。…演奏、いつもより良かった。」
「……いつもより……?」
「音が…心に染みた。
前は、トゲトゲだったのに。
だから弦変えたのかなと思ったけど、
いつもの弦だった。
たぶん弾き方が変わった……ううん、
…瞬が、変わったんだと思う。」
「……フン。褒めるなら
暗そうなトーンで言うな。勘違いするだろ。」
そう言いつつも、の言葉に
頬を染める瞬は照れているようだ。
……ま、は言われても
1ミリも表情動かさなかったけど。
「……さっき、新しいフレーズ思いついた。」
「…おい…それ本当か。」
「うん。…今度、録音してくる。」
「………それなら、
今度やる新曲に試してみるか。
今回の新曲はピアノが似合いそうでな。
キーボードはピアノ主体にしようと
思ってるんだ。」
「………そうなんだ。」
トントン拍子で進む2人の会話に
南先生が笑った。
「…あら、君と瞬君って
気が合うのね。」
「………ああ。コイツがデブセイじゃなければ、
ヴィスコンティに引き抜いてるところだ。」
「……瞬君、もしかして
出不精って言いたいの?」
「…ぐっ……デブショーじゃなければ、だ!」
瞬がむすりと怒って訂正する。
……そもそも、デブショーってなんだ?
はデブじゃねぇぞ?