第11章 12月『聞こえなかった兄の声』
(一視点)
「……………どうしたんだよ、。」
をテラスに連れ出して、
誰もいないベンチに座って、
いつものように俺の膝に乗せる。
向かいあわせで座らせると、
と視線が合った。
「…………べ、つに。」
なにかがおかしい、と俺の直感が
を見てそう言っている。
いくら先生に無理矢理連れ出されたからって、
機嫌が悪すぎる。
今までだって、翼や悟郎に無理矢理
色んなところに連れ出されていたわけだし、
連れて行ったら行ったでも
楽しんでいたし、
喋らなくなるくらい不機嫌になる事は
無かった。
「言わねぇと分かんねぇぞ。」
「……………。」
の瞳は曇っていて、
心のモヤモヤを表している。
その合間合間に見えるのは、俺と……先生?
「……先生がどうかしたのか?」
「…………っ!」
の体が一瞬で強ばり、
俺のタキシードを掴む手が強まる。
…………先生が、原因か?
「…………。」
「………なんだよ。全部言ってみろって。」
俺がそう言うと、
がむすりと頬を膨らませた。
「…………言いたくない。」
「…なんじゃそりゃ。」
予想外の言葉に腑抜けた返事をすると、
が顔を逸らす。
「は、恥ずかしいから……。」
でも、俺の方をちらちらと見て、
顔色を伺っていて、言おうか言うまいか、
口をもごもごさせている。
「あー……。」
そんな不機嫌な顔も可愛い、なんて言ったら、
、なんて顔すんだろな。
そういえば、こうやってちゃんと
と向き合うのって、
あの喧嘩の一件以来か。