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弟バカと兄バカ【VitaminX 原作沿い 】

第11章 12月『聞こえなかった兄の声』








「この時期?」




俺が首を傾げると、
が草薙の腕に掴む手を強くする。



「…………聖帝……舞踏祭…………。」



その言葉で、ああ、と思い出した。





……………そうか。もう、そんな時期か。





ふと周りに目を向けると、
先週まで喧嘩だのなんだのと
噂していた生徒達が
今度はきゃあきゃあと騒いでいるのが見える。


その目線の先は俺でもなく、
草薙でもなく…。


……なるほどな。


「今年は王子様と踊りたい姫が多いってか。」




文化祭のあの熱狂を思い出す。


あの一件から、のファンも
爆発的に増えたって噂だ。


…真壁や七瀬に比べたら
まだまだ少数派だけど。



「………………………。」



俺がそう言うと、
の眉間のシワが寄る。

………あ、ちょっと怒ってるな、これ。




「そうなんだよなぁ。
俺達がいる時は寄ってこねぇけど。」


「…そりゃあ、そんなにベタベタしてたら
近づけないだろ。フツー。」



「……………わざと、です。」


はまたぼそりと呟いた。


眉間のシワは深いのに、
瞳は困惑の色を写しているから
少し不思議だ。


怒りたいのに、女子が怖くて怒れない……
そんな所だろうか。





………昔、草薙がの顔見れば
何考えてるか分かるって言ってたけど、


その意味が、今なら少しだけ分かる気がする。



「……行きたくない。」


「来いよ、ちゃんと。」



それでも、俺は教師だから
来なくていいとは言えない。


「そうだぞ。今年はさ、
翼が南先生誘って、B6とみんなで
聖帝祭行くって決めたんだぜ。
だから、も
行かなきゃダメだからな。」



嫌そうな顔全開のは
その言葉で機嫌をさらにひん曲げたようで、
ぷい、とそっぽを向かれてしまった。





だが、の機嫌とは裏腹に
その日はすぐにやってきた。





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