第11章 12月『聞こえなかった兄の声』
(一視点)
「、中入ろうぜ?な?」
「やだ。」
「……あ!ほら!
うまそーな料理が見えるだろ?
中に入って一緒に食べようぜ。」
「やだ。」
「なら、俺が抱っこしてやるよ。
ほら、おいで。」
「やだ。」
「…………あー、じゃあどうすっかなー…。
あ!おんぶがいいのか?」
「やだ。」
聖帝祭当日。
人混みが多い中、
B6の周りだけは、
ぽっかりと穴が空いたように
人が避けている。
その真ん中にいるは1人、
赤いタキシードを着て頬を膨らませた。
「ったく、いつまで待たせる気だ!
時は金なりと言うだろう、いい加減にしろ!」
「待てって、瞬!
今年こそ、皆で一緒に入ろうぜ。な?
俺がいてやるから。ほら、おいで。」
「やだ。」
「ポペラ寒いし疲れた〜!
ゴロちゃん中でゆっくりあったまりたい!
ねぇハジメ、先行っちゃダメなの?」
「ダメだ悟郎!!
俺じゃあ説得出来ねぇんだって。
何言ってもダメだし…。頼むって」
「やだ。」
「もうムリじゃね〜?
コイツ去年もこんな感じだったしィ?
入りたくねェなら1人で帰れっつーの。
キシシッ」
「………なら、帰る。」
「だぁーーっ!駄目だ!!
ぜっっったいに駄目だ!!
去年勝手に一人で帰って、
酷い目にあっただろ!!」
「…酷い目って、
風邪引いて熱出しただけだし。」
「ただの風邪じゃねぇ。
熱上がって入院しただろ!1週間も!
俺あの時心臓止まったからな!!」
「……心臓止まったら…死んじゃう。」
「……ん?なんか言ったか?」
「………なんでもない。」
俺の言葉に嫌そうな顔をする。
ああもう!嫌なのは、俺も分かるけどさ。
帰らせるのは、絶対に駄目だって!
もしまた風邪引いたらどうすんだ!!!