第11章 12月『聞こえなかった兄の声』
(視点)
「……………あ、ハジメ……と、レイだ!」
僕らを呼んでいるのが聞こえて、
くるりと振り返ると、遠くにB6の皆が見えた
悟郎が走ってきて、みんなも
後ろからぞろぞろと歩いてくる。
「…あ。みんな。」
僕が呟くと、
悟郎が僕の目の前まで走ってきて、
僕の顔と兄さんの顔を交互に見て
にやりと笑った。
「……ふーん、その様子…。
やっと上手くいったみたいだね!」
「…永田の報告通りだな。」
翼も満足そうに笑い、瞬がため息をついた。
「バカサイユに来ないなら来ないで
連絡くらい寄越せ。…全く。」
瞬は段々僕の保護者になりつつあるのは
気のせいだろうか。
「これでやァーっとジメジメしたナギと
おさらば出来るってか!
テメェら…二度とすんじゃねーぞヴァーカ!
キシシッ」
キヨは相変わらず本音と嫌味を
くっ付けたような事を言っている。
「…まぁ、ジメジメは悪かったって。
もうしねぇよ。……な?。」
兄さんもいつも通りにこりと笑った。
ううん、それだけじゃない。
B6もみんな、いつも通りだ。
もちろん、僕も。
「………うん。」
無断でバカサイユに来なかった理由も、
B6のみんなを避けていた事も、
皆は何も聞かずにまた僕の事を
受け入れてくれた。
それが嬉しくて笑ってみせると、
後ろで寝ぼけた瑞希がぼそりと呟いた。
「…………めでたし、めでたし。」