第11章 12月『聞こえなかった兄の声』
(真田視点)
「………のやつ、まだかな……。」
朝、校門の前で外を見る……が、
の姿はない。
あの後は
帰ってこなくて、
放課後のカバンを持ったまま
どうしていいか分からないでいると、
真壁がの私物を寄越せと言うから
そのまま渡してしまい、翌日の朝。
「……勢いで渡しちゃったけど
とB6って、距離置いてんだよな…」
真壁に安易に渡してしまった事に
ため息が出る。
「………に叱られそうだな。」
口をへの字にして、
無関心の冷たい目で俺を見るが
簡単に想像出来る。
「…………はぁ。」
なんて言おうか悩んでいると、
後ろから声をかけられた。
「…あ、真田先生!はよっす。」
「ぬぉわっ!!」
びっくりして振り返ると、
ニコッと眩しいイケメンスマイルを浮かべた
草薙がいた。
「…あ、く、草薙か。びっくりさせんなよ。」
「……へへっわりぃわりぃ。」
草薙はとても上機嫌らしい。
ニヤニヤと浮かべられた笑みは
絶えることはない。
「………先生。」
草薙の後ろから、ひょこりと誰かが顔を出す。
まるで小動物のようなその動きは、
…………いや、!!?
「あ!!?!」
「………おはようございます。」
後ろから顔を出したのはで、
恥ずかしそうに出てきたの手は
草薙としっかり繋がれている。