第11章 12月『聞こえなかった兄の声』
(第三者視点)
「………フン、そうか。永田、ご苦労だった。」
翼がパタリ、と携帯を閉じた。
教室にいるにも関わらず電話に出た翼を見て、
南先生が翼を睨んだ。
「あ!翼君!今携帯で誰かに
電話したでしょう!」
今は休み時間とはいえ
学校で携帯電話を使うのは禁止だ。
「携帯は学校では禁止よ!没収よ没収ー!!」
南先生が翼の元へ向かう間、
翼はやれやれとため息をついた。
「…全く、世話の焼ける兄弟だ。」
だが、その顔はどこか気の抜けた表情で、
安堵の笑みを浮かべていた。