第10章 11月『王子様の超越』
「………ご…ご馳走様……。」
テーブルの向こう側から声がして、
我に返った。
顔を上げると、
真田先生が空っぽの皿を兄さんに渡している。
「すげぇな、真田先生。ソンケーするぜ。」
「……ウプッ…胃が重い…。」
すごい、あの生クリームの山も、
ホットケーキも
全部食べちゃったんだ。
兄さんが苦笑いする中、
真田先生が席を立った。
「……じゃあ、また帰りにな。」
真田先生が僕を見て青い顔で
軽く笑う。
「……あ、ちゃんと……帰りのHR来いよー。」
僕にそう言うと、
お代を近くにいた悟郎に渡して、
ClassXの教室を出ていった。
「マサちゃんまたねーー!」
「……おー、ごちそうさま……。」
悟郎が出口で軽く手を振るのを
見てから
ふと自分のテーブルに目を移す。
僕のホットケーキは
半分からほとんど進んでいなかった。
「……あ、。食えねえだろ?
手伝うぜ。」
兄さんが僕の隣に椅子を持ってきて座った。
僕のフォークを手に取り、
半分溶けている生クリームを
ホットケーキの上に乗せた。
「………ありがとう。」
「………俺も小腹空いてたし、
気にすんなって。」
兄さんがパクパクと
ホットケーキを頬張っていく。
「……あ、さっきはごめんな。
先生がよ、真田先生が最近
と話せてないみたいだから
ゆっくり話す機会あげるんだって
聞かなくてさー。」
「………そうなんだ。」
そう言われてみれば、
4月のほぼ毎日来ていた頃に比べたら
今はほとんど一緒に話す事も
無くなっていた。
………別に、いいけど。
「………ま、は
嫌かもしれないけど、
真田先生もの事ちゃんと
考えてるとは思うし……
俺も言いにくくてさ。」
「………………。」
「……ククッ、ごめんって。
次はちゃんと止めてやるから。」
嫌そうな顔をすると、
兄さんが笑った。
僕はそのおかげで
大事に飲んでる紅茶を
一杯持っていかれたんだよ、もう。