第10章 11月『王子様の超越』
「…………………すごい。」
ドキドキして顔を上げると、
皆嬉しそうに僕らを見て拍手したり
歓声を上げている。
僕は今まで嫌われ者だと思っていたのに、
そうじゃ、ないのかもしれない。
「草薙君ーー!手振ってーー!!」
「………ははは。」
先程から『君LOVE』と書かれた
キラキラしたうちわを振っている
女子に軽く手を振ると、
黄色い悲鳴がより一層高まった。
「キャアアアアアアアア!!」
幕が降りて、僕は舞台を後にする。
緊張したし、嫌だったし、
やっぱり苦手だって再確認したけど……
またやってもいいかな、なんて
思ってしまう僕はどうやら
調子に乗っているらしい。
「…………疲れた……。」
裏に入ると、肩の力が抜けて
どっと疲れが急に襲ってくる。
でも、その疲れと共に来る
達成感と満足感は僕の中に
少しだけあって、
それが僕の疲れを少し軽減させていた。