第2章 4月『沈黙の少年』
「…えっとな、昨日の事で
ちょっと聞きたいことがあってさ。」
「………きのう?」
草薙は俺の方を見て首を傾げる。
分からない様子の草薙に
少し小さい声で周りの生徒に聞こえないように
ボソボソと喋った。
「…そ、その……去年の草薙の成績の事。
昨日斑目に言われてから、調べてみたんだ。」
「…………ああ、そういえば。」
そ、そ、そういえば!?
予想外の答えに目を丸くする。
なんで?成績って学校の中で
1番気になることじゃないの?
しかもClassAだったら尚更気になるはずだろ…
「そういえばって…。自分の事だろ?
俺が超心配してたの馬鹿みたいじゃん……。」
「…ああ、僕、成績はほとんど見ないので。
下がってた事も昨日初めて知りました。
…どうでもいいですが。」
「…成績はちゃんと見た方が
いいと思うぞ、俺。」
「そうなんですか?
いつ見ても全部1番上なんで、
小学校の時、つまらなくなって、
見るのをやめてしまいました。」
「…あ………そう。」
成績って作るの大変なのになぁ……。
聖帝の学年トップにこんな事言われると
なんかへこむ………。
「…もういいですか?
もうすぐバカサイユなんで。」
気付いたら校舎の玄関まで来ていた。
ここから出てバカサイユに
行くつもりだったんだ。
返事をしない俺を無視して
下駄箱へ向かう草薙を止める。
「あ、待って!
最後に…1つだけ……。」
「…はい。1つなら。」
仕方なく、というように俺の方を向いた。
「………あのさ、草薙はこのままでいいのか?」
「…何がですか?」
「だから、この下がった
成績のままでいいかって事。」
草薙はこの去年の後期以外の成績は
トップクラスだ。
この成績が無ければ、平均値はグンと上がるし
大学の選択肢も増える。
それに、斑目の言っている事が本当なら、
草薙の成績は不正があったもしれない。
もし、草薙が望むなら、
俺は校長に掛け合ってみても良い……
そう思っていた。