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弟バカと兄バカ【VitaminX 原作沿い 】

第10章 11月『王子様の超越』












「……『おお、なんて美しい姫なんだ。』」




僕が舞台に出ると、
案の定、皆の視線が僕に集まる。

動悸がして、心臓がバクバクと鳴っていた。





「………………ッ…………。」




焦るな、草薙。


大丈夫、観客は動物、観客は動物……。




僕は震える手先で、
白雪姫の頬に触れる。




ゆっくり耳元に近寄って、
ぼそりと呟いた。





「………………昨日は………ごめん…ね…っ、」






ああ、言えた。良かった。


昨日、白雪姫の子に謝れって
言われてたけど、これでOK……かな。





「…………えっ………!?」



僕の言葉に、驚いたように
白雪姫が目を開ける。






「……それだけ………言いたかった………。」




僕はゆっくりと白雪姫から離れた。

白雪姫は起き上がって僕を見るが
僕はもうそれどころじゃない。

離れて客席をちらりと見ると
針のむしろのような視線を感じる。


痛い、視線が痛い。


早く終わってくれ、お願いだから…!







「『凄い!白雪姫が生き返った!!』」






「『…まぁ、私はどうしてここに……。』」





最後の台詞。
これを言ったら終わりだ。


僕は白雪姫の足元に跪く。
白雪姫の手に優しく触れた。


女子の手に触れる事なんて
滅多にないから緊張する。





「『僕と結婚してください。』
『共にお城で暮らしましょう、
僕だけのプリンセス』…。」






………言えた!
噛まずになんとか言えた。



ホッとして白雪姫を見ると、
白雪姫は目に涙を溜めている。


彼女も終わって、
ホッとしてるのかな……。




「『はい、王子様………。』」





彼女がそう言って、
長かった劇は終わりを告げる。



「キャアアア!草薙君ー!」


「こっち向いてー!」



女子の黄色い悲鳴で正気に返った。

動物ではない、観客が
僕らを見ていて頭がクラクラする。



「………………ッ」


でも、そこに送られたのは
僕に対する敵意でも嫌悪でもなく
歓声だった。




「『めでたし、めでたし。』」


マイクでナレーターが言って、
僕らは頭を下げる。


「「「「ワアアアアア!!」」」」


歓声と拍手が会場を包んだ。


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