• テキストサイズ

弟バカと兄バカ【VitaminX 原作沿い 】

第10章 11月『王子様の超越』








『私は白雪姫。貴方達は?』


『僕達は7人の小人!!
さぁ白雪姫、僕達の家に招待するよ!』






舞台では、劇が始まっていた。




「…………………。」

ライトに照らされて光る舞台を見ながら、
僕は舞台袖の端で出番を待っていた。


こっそり客席を覗き見ると、
見たことの無いくらいの
満席。席には飽き足らず、立ち見までいた。





「………はぁ………。」




思わずため息が漏れた。
お腹がぎゅぅ、と痛くなって、
頭もガンガンしてくる。

聖帝の文化祭の劇は
喫茶店と並行しているから
劇を見に来る人は少ないはずなのに。



「………なぁ、客席、見たか?」


「凄い人よね。なんでかな?」


「もしかして草薙目当てで来てるんじゃない?
女子ばっかだし。」




クラスメイトのコソコソとした
話し声が聞こえる。

僕目当てなんて…止めてほしい。
僕のためを思うなら帰って
兄さんの喫茶店にでも行ってよ。



「……………ううぅ………」



舞台の裏に入り、
舞台に背を向けて立って
壁に頭を付けた。

ぺたり、とくっついた壁は冷たくて
ひんやりしている。


冷や汗がたらり、と垂れた。


別に、予感していなかったわけじゃない。
元はと言えば、今日の朝から
緊張しきっていた。

そしてそれが直前の今となって
最高潮に達しているんだ。






「…も…無理……。」





お腹がキリキリと痛み出して
手で抑えて座り込む。


頭の中に不安の恐怖が駆け巡り、
僕を崖のギリギリの所まで追い詰めていく。






やっぱり、僕には…王子なんて………。








「草薙、そろそろ出番だけど。
…大丈夫か?体調、悪いのか?」


「………先生…は……?」


「…今いないよ。反対側の舞台裏で
大道具手伝ってると思う。」





こんな時に……限って……!!


「…………ッ………。」



汗が化粧と混ざって、肌色の汗が床に落ちる。




「………草薙君、ハンカチ。汗拭いて。」


近くにいた女子が、
僕にハンカチを手渡してきた。




「………でも、化粧……ついちゃう、から…。」


「……そんな事、気にしないで。
草薙君、最近頑張ってるもの。
……私、応援してるから。」


「………………。」



/ 427ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp