第10章 11月『王子様の超越』
「お会計失礼します。
ホットケーキセットですので、
600円になります。……400円のお戻しです。」
「…………ありがとうございました。
またのご来店、お待ちしております。」
レジにお金を入れてお辞儀をすると、
生徒達がふわふわと周りを見渡しながら
部屋を名残惜しそうに出ていった。
「…………ふぅ。」
何人レジをしたか分からないくらい、
会計を捌いて、周りを見る。
お客さんも少し落ち着いて、
先程の戦争状態は緩和しつつあった。
…………とはいえ、満席だけど。
「…………あ、瑞希。」
「……ただいま。」
その時、瑞希がフラフラと帰ってきた。
そしてその後から、南先生が入ってくる。
「…あ、……君…………ッ!?」
南先生が僕の顔を見た瞬間、
カチリと石のように固まる。
「……………………………。」
「………先生?」
僕が呼びかけるが、先生はカチリと
固まったままで動かない。
「…………あの……先生?」
声をかけるが、全く動かない。
一体どうしたんだろ。
「……………先生。えっと…おーい。南先生?」
僕がもう一度声をかけ、
先生の肩に手を置く。
「…………ハッ!!!」
「…………!?」
先生は僕が肩に触れると
一瞬だけ体を震わす。
僕もそれに思わず手を離すと、
先生と目が合った。
「…………大丈夫ですか?」
僕が声をかけると、
南先生はコクコクと頷いた。
「………え、えぇ勿論!
大丈夫に決まってるじゃない!!」
「…………は、はぁ。」
南先生は半笑いをしながら誤魔化した。
むむぅ、大丈夫ならさっきの沈黙は
なんだったんだろう。
「………と、と、ところで!
君もClassXを
手伝ってくれてるのね。」
「……はい、まぁ……レジだけですが。」
「ありがとう。助かるわ。」
南先生は嬉しそうに笑った。
その手には昨日は無かった
包帯が巻かれている。