第10章 11月『王子様の超越』
「…死ぬかと思った。兄さんの馬鹿。」
酸欠から窒息するギリギリの所で
やっと離してもらえて、
暗くなりかけた意識からなんとか帰ってきた
千鳥足で兄さんから離れて、翼の手を掴む。
フラフラしていると、
翼が支えてくれた。
うう、頭がクラクラする………。
「……悪かったって。な?
ほら、お兄ちゃんの所おいで。チチチ……」
翼の所に行くと、
兄さんがニヤニヤ笑って手招きしている。
チチチ…って、僕、猫じゃないもん。
「……やだ。」
「えええっマジかよ!!嘘だろ!?」
僕が拒否すると兄さんは
笑顔から一転、冷や汗を垂らした。
そんな兄さんから目をそらして
翼の腕をギュッと掴む。
「ま…たまには、一も
オキューを吸えと言うことだ。」
………それを言うならお灸を据える………。
「………とにかく、
ぎゅーするなら兄さん嫌い。」
「……うぅ、翼ぁ、が
反抗期だぁあ……っ」
「……フン。頭を冷すんだな、一。
クククク…ハハハハ……ハーッハッハッハ!!」
翼は、先程の怒りはどこへやらで
そのまま教室に向かって歩き出した。
翼の制服を掴んでいた僕はおのずと一緒に
ついて行く。
「あ!待てよ、!翼ぁ!!」
兄さんが慌てて追いかけてきても、
翼の足は止まらなかった。