第10章 11月『王子様の超越』
「……遅い!!」
「……ごめん。
ちょっと、時間かかったから。」
翼と兄さんの元に駆け寄る。
2人はそのまま来たのか、ウエイター姿だ。
……普段と違うからか、ちょっとカッコイイ。
あ、そういえば。
「………翼、衣装作ってくれたって聞いた。
ありがとう。」
「…別に……ただの暇つぶしだ。」
「僕、似合ってた?」
「……フン、俺が仕立てたんだ。
似合わないわけがないだろう。」
僕がお礼を言うと、
翼はドヤ顔をして言った。
暇つぶしにしてはだいぶ凝った
デザインだったような………。
「あ、兄さんも来てくれてありがとう。」
僕がそう言うと、
ボーッとしていた兄さんの目が僕に向く。
「ーーーッ!!」
「わっ!」
急に兄さんが覆いかぶさって、
僕に抱きついてきた。
目の前が真っ暗になって
息が苦しくなる。
「…マジで可愛いかったぜ…。」
「むぐぐ……」
兄さんは僕を強く強く抱きしめる。
びっくりして、思わず背中に手を回したものの
息がほとんど出来ない。
「しかも…格好良かったしさぁ……」
「ぐ………るし……」
なんとか声を出して、
兄さんに離してもらおうと試みるものの、
腕を緩めてくれない。
兄さんの体をドンドンと手で叩いて抵抗するが
体格差がありすぎて、全く効果がない。
「もう最高だったっつーか!!!」
「………う"………」
あ、ダメかもしれない。
空気が吸えなくて、
息苦しいのと同時に気が遠くなる。
「……一、最高なのはいいが、
その前にが死ぬぞ」
「………ん?が?」
「…………………………」