第10章 11月『王子様の超越』
(視点)
「…………終わった…………。」
なんだかんだ言って、緊張しちゃったけど、
なんとか終われて良かった。
「…あ、あの…草薙君、お疲れ様。」
裏に入り一息つく。
皆荷物や道具を片付けていて忙しそうだ。
女子にも話しかけられたが、
とりあえずこの隙に早く着替えよう。
「あぁ……うん、お疲れ様。」
ジャケットとベストを脱いで
ワイシャツ姿になる。
とりあえず、高そうな衣装はできるだけ
脱いでおかなきゃ。
返事をしながらワイシャツの第1ボタンを外す
ふぅ、苦しかった。
「……………。」
僕が服を脱ぐ姿を女子が
真ん丸な目で見ている。
「…………何?」
なんだろう。ズボンは脱いでないのに。
「あ、いや……あのっ」
その子の周りを見ると、
女子が同じような顔でこちらを見ていた。
…僕、また何かしちゃったかな。
「………あ、王子。お疲れ!」
「………王子はもう終わったよ。」
その視線を遮るように
目の前に坂下が現れる。
坂下は大道具だったから、
最近ずっと会うことは無かったな。
「流石ハジメ先輩の弟だよな。
似合ってたよ!ハジメ先輩も来てくれてたし」
「……そうなの?全然気付かなかった。」
「えー?ちゃんと見とけよ。
俺、幕の隙間からこっそり見てたけど、
ハジメ先輩、真剣にこっち見てたぜ。」
「………そう。」
兄さん、見に来てくれたんだ。
お店忙しいのに………。
ちょっとだけ、嬉しい。
「……じゃ、僕先行くから。」
自分の荷物を持って外に出る。
外の女子がここを嗅ぎつける前に出なくちゃ。